2019年の「トランスジェンダーの権利保護に関する法律」の改正案により、医療証明書なしでの自己認定が可能だった規定が削除される。また、法的な性別認定には医療評価や、州政府が任命した専門家による書類提出が義務付けられることになった。デカン・クロニクルによると、活動家たちはこの改正を「進歩の逆転」と批判し、特にトランスジェンダー女性やノンバイナリーの人々に悪影響を与えると主張している。

抗議活動と市民の反応

改正案の提出後、インド各地で抗議活動が発生した。デリーでは数千人のデモ参加者が議会の外で集まり、「Not My Body, Not My Choice(私の体ではない、私の選択ではない)」や「Trans Rights Are Human Rights(トランスの権利は人権)」といった掲示を掲げた。同様の集会はムンバイでも行われ、ナショナル・レガル・サービス・オーガニゼーション(NALSA)の活動家たちも参加し、政府に対し改正案の見直しを求めた。

BBCによると、トランスジェンダーの活動家たちは改正案を強く非難し、ムンバイの活動家リーダーは「この法律は私たちの存在を犯罪化する。尊厳ある生活の権利を奪う」と述べた。この抗議活動は、国家人権委員会(NHRC)を含む市民権利団体の支持も得ている。NHRCはこの法律の独立的な見直しを求めている。

チェンナイでは、500人以上のトランスジェンダーの人々と支援者たちが市内の中心バス停で座り込みを行い、政府に対し改正案の撤回を求めた。参加者で名前が明らかになったプリヤ氏は「長い間、私たちが認められることを戦ってきました。この改正案は、差別が蔓延していた時代に戻すものです」と語った。

政府の主張と法的課題

政府は改正案を擁護し、現行法の悪用や、性別認定の手続きをより明確にする必要性を説明した。社会福祉・権利向上省の声明では、「新しい規定は透明性を確保し、不正な目的でシステムを悪用しようとする人を防ぐためのものです」と述べた。

一方で批評家たちは、政府の主張は法律の目的を誤解していると指摘している。2019年の法律は、トランスジェンダーの人々が雇用、教育、公共サービスの利用において差別を受けることを防ぐことを目的としていた。改正案は、トランスジェンダーの人々が仕事に就くことや医療へのアクセス、法的書類の取得をより困難にするとされている。

法的専門家たちは、この法律の合憲性にも懸念を示している。デカン・クロニクルによると、最高裁判所に、基本的人権(第14条:法律面前の平等、第21条:生命と個人の自由)を侵害しているとして、改正案を提訴する訴訟が提出される見込みだ。

国際的な反応と地域的背景

国際社会はインドの動向を注視している。国連人権事務所は声明で、改正案が「インドのトランスジェンダーの人権の進展を逆戻りさせる恐れがある」と懸念を表明した。欧州連合(EU)もインド政府と対話を行うよう呼びかけ、脆弱なコミュニティの権利保護の重要性を強調している。

珍しく、国家人権委員会(NHRC)はこの問題を自主的に取り上げ、人権の重大な侵害とし、独立した調査を求める声明を発表した。NHRCの関係者らは、政府に対し改正案の審査が終わるまで一時的に中止するよう求めている。

一方で、LGBTQ+の問題に対してこれまでより進歩的だったタミルナード州では、地元の活動家たちが改正案の潜在的な影響を広く知らせるキャンペーンを展開している。デカン・クロニクルの報道によると、改正案の撤回を求める請願書に1万以上の署名が集まっている。

なぜ重要なのか、今後の展開

この改正案は、インドのトランスジェンダーのコミュニティに大きな影響を与える可能性がある。トランスジェンダーの人口は200万人以上と推定されており、改正案により、雇用や医療へのアクセス、法的保護が制限される恐れがある。BBCによると、この改正案は、LGBTQ+の人々や障害を持つ人々といった他の少数派にも悪影響を及ぼす恐れがある。

法的専門家たちは、改正案が裁判所で長期間の論争を巻き起こすと予測しており、今後30日以内に提訴される可能性が高い。一方で、活動家たちは全国的な抗議活動を計画し、政府に対し改正案の見直しを求める予定だ。この議論の結果は、インドの人権と社会正義への取り組みに長期的な影響を与える。

状況が進展する中、政府は活動家や市民社会の懸念に対し圧力を受けることになる。NHRCの関与や国際的な注視の下、この改正案の将来は不透明なまま。現時点では抗議活動は続いており、インドにおけるトランスジェンダーの人権の闘いは止まらない様子だ。